電気化学触媒: 熱化学的プロセスの電気化学分野への適用

2023年12月25日

プロピレン直接エポキシ化反応を再設計、サステナブルな有機化学合成手法の確立に一歩前進

本研究を主導したHao Li准教授

従来型の化石燃料に依存した有機化学合成法では温室効果ガスが大量に排出されることから、温室効果ガス排出削減の切り札として、有機電解合成法が注目を集めている。この手法は、低効率の熱化学的プロセスの代替として有望視されており、さらには、電気化学的な概念や手法をとりいれることで、新たな触媒反応のデザインにもつながると期待されている。

2022年、AIMRのLi准教授らは、選択性が低く、高温条件が必要なプロピレン直接エポキシ化反応(DEP)において、電気化学的プロセスを利用した触媒反応を設計し、酸化プロピレンの新たな合成法を開発した。

Li准教授は、「熱化学的プロセスではなく電気化学的プロセスを活用するメリットは、電場の印加に依存して反応が活性化される点です。これを念頭に置いて、私たちはDEPに関する各反応をモデル化し、選択性を高め、低い温度でも反応が進むような触媒表面の特徴と反応環境について調べました」と語る。

研究チームは、Ag, Au, Cu, PbO2, PdO2, PtO2, TiO2表面を対象として、密度汎関数理論計算(DFT計算)、表面プールべダイアグラム(電位-pH図)、スケーリング解析、マイクロキネティックモデリングを組み合わせた解析を行った。その結果、水の活性化によって生じる酸素原子の存在下では、PtO2のような結合力が弱い触媒でDEPが容易に進行することを突き止めた。

「本研究結果は、さまざまな触媒機能を細かく調節することが、室温下における高選択的な電気化学的DEPの実現つながることを示唆しています。現在は、シドニー大学の実験系研究者と共同研究を行い、熱化学的DEPの代替となりうる触媒の開発に尽力しています」と、Li准教授は研究の進捗についてコメントしている。

(原著者:Patrick Han)

References

  1. Li, H., Abraham, C.S., Anand, M., Cao, A. & Nørskov, J.K. Opportunities and Challenges in Electrolytic Propylene Epoxidation Journal of Physical Chemistry Letters 13, 2057-2063 (2022). | article

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